冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
この城内は、複雑な構造をしている。
それは万が一敵が中へ侵入した際に、目的地へ行かせない為でもある。
(始めて侵入する馬鹿が、真っ先にお妃様を攫うとも考え難いし……)
「テオビューク様は直ぐ様、城に残っている騎士を動かして下さい。まだ城内にさらった犯人がいるかもしれません。わたくしは門を閉めるよう手配致します」
「了解した」
指示をすると、テオビューク様は直ぐに部屋から出て行った。
出入口の方を見つめ、一人思う。
何でこんな事になってしまったのか。
あの時、報告を後にしてお側を離れずに、いていれば。
もしかしたら、こんな事態にはならなかったのかもしれない。
(……………失いたくない)
お妃様に仕えてから、あまり日にちは経っていないけれど。
不思議な事に、とても心配で……不安でならない。
この感情は、お妃様にお仕えする侍女だからだろうか。
それとも自分で気づかないだけであって、他に本当の理由でもあるのだろうか。
(どちらでも良い……………。どうかご無事でいて下さい)
クランベルは、己の不安をかき消す様に拳を強く握りしめた。