冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「……今朝、ティアンノ卿とその息子が顔を見せに来た。お前との結婚を白紙にしたい、とな」
「……っ!?」
思わず声が出そうになった。
結婚を白紙にしたいと申出たのはこちらからなのに、まるで自分が拒否したかの様な言い方。
「理由はこうだ。『彼女が僕を殺そうと裏で企んでいる事を知ってしまった』と」
「それは違います……っ」
事実無根の言葉に、直ぐさま否定の言葉を入れる。
けれど、否定した所で状況は悪化するだけ。
「……貴様。誰様に向かってその様な口を聞いているのか分かっているのか?」
尊大な態度で、こちらを見下ろす。
私はただの皇女で、相手はこの国の皇帝陛下。
敵う相手ではない事は、始めから分かっていたのに。
「証拠は全てここにある。貴様が企んだとされる"毒殺"について細かくな」
そう言って分厚い書類の束を掲げる。
気味の悪い視線を感じ、咄嗟に大臣達の並ぶ列へと視線を向けると、そこには昨日ケレイブ様と一緒に部屋にいた男がいた。
(まさか……)
その男は不気味に笑った。
彼らの仲間(グル)だ。