冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
最後に見たのは、冷たい目をした侍女の姿だった。
そして、現在。
目が覚めた私は、何故かこの場所にいる。
(つまり…………)
そうゆう事だ。
(まさかあれが睡眠薬だった何て………)
侍女から薬を盛られた事も驚きだが、この事態が何よりも驚きだ。
攫われて、手枷もなしに動けるどころか、こうして生きているだなんて。
普通攫われたら、流石に"死"は覚悟する。
運良く殺されなくても、拘束する為の手枷は確実にされているはずなのだが。
足枷も手枷も、何もない。
けれどそれは反対に、ここからは出れないと遠回しに言っているかのようだった。
(捜しに…………………来てくれるよね?)
流石に私が居なかったら、誰かしら気づいてくれるとは思うけれど。
ちょっとだけ不安になる。