冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「ギュルァァア…ッ…!」
荒い息遣いを間近に感じる。
ドラゴンは直ぐ側まで来ている。
(やっぱり、食べられるのかな……………)
死にたくないと願ったところで、特別な力も何もない私にはどうにも出来ない。
(………嫌だな)
思わず目に涙が滲む。
私はもう、終わりなんだ。
覚悟をして、瞼をギュ…ッと閉じた。
______……だが。
「………………ん…?」
可笑しい事に何も起きない。
………いや、起きてはいるのだと思う。
けれど、直接身に何か危険な事が起きたという訳ではなさそうだ。
(硬い…?)
肌に当たる硬くてザラザラした可笑しな感触。
けれど、温かくて冷えた身体が温まっていく謎の感覚もする。
恐る恐る目を開ける。
そこには、何とも不思議な光景が広がっていた。
「なん……で……………」
目の前のドラゴンは私を食べる事なく、
何故か私の身体を囲む様にして側に座っていた。
まるで、身体を温めてくれるかの様に。
「……………………まさか、温めてくれているの…?」
言葉が通じないと分かっていたけれど。
私をジッと見つめるその目が。
まるで私の言葉を理解しているかの様な気にさせた。
(……………そう…なんだ)
「怯えてごめんね。ありがとう…」
「ギュル………?」
手を伸ばすと、私はそう言って優しくその身体に触れてみせた。