冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】

動揺




雨により出発が遅れた視察団一行は、半日遅れで次の目的地へと到着していた。


ある程度町中を見て周り、日が傾き始めた頃。


騎士団団長やその他管理の責任者を集めて行う大事な会議の最中。


かなり焦った様子の騎士の登場により、会議は一時中断となった。


そして、受けた報告の内容とは、何とも最悪なモノだった。


「………………な…んだと?」


その言葉に、一気に周りが騒がしくなる。


「……お、お妃様が何者かに連れ去られ、現在行方不明との事でございます……っ…!!」


膝を地面につき、皆の前で報告する騎士は動揺から声が震えている。


「……………王様。どうなさいますか?」


ピリピリした空気の中、唯一王様に向かって口を開く事が出来るであろう宰相のレニアスは、恐る恐る王様へ意見を求めた。


レニアス以外の他の者が下手に口を開けば、死人が出るかも分からない。


それほど空気は張り詰め、緊張感が漂っていた。


「今回はここで中止にする。直ぐに王城へ戻るぞ」


その声に反応したアヴァは、こちらへ近づく。


「直ちに騎士を分散させ、城内と城下町周辺を捜させろ!」


「………かしこまりました。直ちに手配致します」


命を受けたレニアスは、早足でその場から立ち去り、近くで待機するアヴァの背へ乗り込む。


「余は先に行く」


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