冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
羽を広げ、空に飛び立つ大きなドラゴンの姿に、その場にいた皆は思わず空を見上げる。
ブワッと激しい風がその場に吹き。
思わず目を瞑る者も中にはいた。
それだけ最後に伝えると、ドラゴンの背中に乗って空へ飛んで行った。
♢
今出せる最大のスピードで、王城へと向かう。
一分一秒でも早く。
時には既に遅い事だってある。
あの時の様に。
また、間に合わずに辛い思いをするのは二度とごめんだ。
「すまない。アヴァ頑張ってくれ」
「ギュル…ア…ッ…!!」
それに応えるようにアヴァは咆哮を上げる。
(……………間に合え。どうか……間に合ってくれ)
心の中で必死に願う。
奇跡的にも同じ世界に。
同じ時代に。
また、出会えたんだ。
もう、二度と失いたくない。
失ってたまるか。
(……………くそ……っ…!!)
不吉にも脳裏に浮かんだのは、あの時の悪夢の様な光景だった。
『………リティ様…リティ様……ッ!!』
両腕で抱きしめても、以前の様な温かみは感じ取れない体。
身に着けている鎧はボロボロで。
美しく整った顔には、誰のか分からない赤黒い血がついていた。
元から白かった肌は、更に白く。
呼びかけには、反応しない。
『……うぁぁぁぁあ………………ッ!!!!』
あの時の絶望感と酷い喪失感といったら、忘れる事は出来ない。
とても悲惨で、とても残酷だった。
自らの命を絶つ程に____……。
それだけ、大切な存在だった。
もし、また失う様な事になれば。
その時は____……。