冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
聞かされたその報告は、何とも最悪なものだった。
せっかく途中まで掴めたと言うのに、これではあの者の居場所も裏幕も分からずじまいだ。
「………………時間がないと言うのに…っ…!」
この間にも連れ去った奴らは国外への脱出を目論んでいるかもしれない。
無意識に眉間にシワが寄る。
「王様」
「何だ……」
良くない状況の中。
地下牢の出入口から姿を現したのは、後にドラゴンで王城へ到着したと思われる、宰相レニアスの姿だった。
手には何やら書類らしいものが見える。
「やっと、到着したか」
「遅れて申し訳ございません。ご報告したい事がございます」
「言ってみろ」
「午後四時過ぎ。竜舎付近にて怪しい男を目撃したとの情報を得ました」
「…………っ…!」
冷静に報告書を読み上げるレニアスは、続ける。
「その男は変な袋を抱えて竜舎の方へと姿を消したそうです。丁度、人が入れそうな大きさだったと」
「竜舎……………か」
もしドラゴン使いと同じ格好をしたまま、大きな荷物を持っていたのなら。
誰も気には留めないだろう。
「……………しかし、何故竜舎の方へ向かったのか不思議だ。普通なら王城を脱出しないか?」
相手も捕まりたくはないはずだ。