冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
何故、あの者を入れたと思われる袋を持って、竜舎へ向かったのか。
どこへ消えたのか。
そもそも目的は一体何なのか。
「それで、ドラゴン使いは何と?」
「それが………何も可笑しな事はなかったとの事です。いつもと同じ様子だと」
ドラゴンは敏感な生き物だ。
もし、竜舎の近くに部外者がいたのであれば、ドラゴンが何かしら反応を示すはずだが。
しかし、何もないとすると。
「………………………もしや…ッ!」
一つだけ思い当たる場所がある。
使われている竜舎ではなく、使われていない竜舎であれば誰の邪魔も入らない。
地下牢を飛び出すと、思い当たる場所へと一直線に向かう。
後ろでは息を切らしたレニアスが何か言っている。
「お…王様…!いきなりどうなされたのですか?」
「妃はまだ王城内にいる。だが、早くせねばマズいかもしれん」
「詳しく説明して下さい…っ!………あぁ!王様…っ」
そうと分かれば、早く行かねば。
恐らくあそこで間違いない。
極一部の者しか知らないあの場所であれば。