冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
(このまま誰も助けに来なくて、ここで死ぬのかな………。あ、でも)
良く考えてみれば生肉があると言う事は、誰かがここへ来てドラゴン用の食事を入れているのではないだろうか。
もし、その人が敵でなければここへ来たとき、助けてもらえるのでは。
(まだ諦める時じゃない………?)
僅かな希望を胸に抱いたその時。
「…………………ッ…!!!」
突然、隣に座っていたドラゴンは立ち上がると、私を何かから守る様に前へと出た。
「…どうしたの?」
ドアのある方をジッと見つめ、何かに威嚇するように低い声で唸る。
一体、何が近づいてきているのだろうか。
もしかしたら、連れ去った敵なのか。
始めは人の気配など感じなかったが、数秒後に外から数人の足音が聞こえてきた。
「ギュルルル………ッ…!」
足音が近づくに連れて、更に大きくなる唸り声。
私は動こうにも疲労と空腹で立ち上がる事すら出来ない。
(もし…敵だったら。私は逃げれない)