冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
絶望的な状況に思わず諦めそうになる。
本当は諦めたくないけれど。
こんな状況では、諦めざるを得ない。
___ガチャ…。
鍵の開く音が聞こえたのと同時に開かれるドア。
しかし、姿を現したのは想像すらしない意外な人物で。
開いた口が塞がらないとは、まさにこの事かと実感した。
「大丈夫か………っ!?」
「おう…………さま?」
そこには、全身ずぶ濡れの王様の姿。
現在、視察中の王様がどうしてこの場におられるのだろうかと疑問を抱く。
「ギュルルル………ッ…!!!」
『近づくな』とでも言わんばかりに威嚇するドラゴンは、今にも王様に襲いかかりそうだ。
「い、威嚇しなくて大丈夫よ…!その人は恐らく、味方だから」
そう伝えると言葉の通じたドラゴンは、先程とは一変威嚇するのを止めた。
それを目撃した皆は驚愕する。
「な、何と……………ドラゴンが言う事を聞いた…?」
「もしや、ドラゴン使いなのか…?」
その光景に王様を始めとする他の人は、何故やら驚いている様子で。
「………………」
私はと言うと、その場に座り込んだまま目の前に立つ王様を見つめていた。
髪は乱れ、服は随分と汚れている。
王様等はこんな状態の中、探しに来てくれたというのか。
信じ難いその光景に、まるで他人事の様に心の中で呟く。