冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「お、王様…………っ…!?」
ドラゴンを横切り、こちらへ駆け寄って来たかと思えば、次の瞬間私は王様の腕の中にいた。
つまり…………抱きしめられていると言う、謎の状況が生まれた。
「あの…………っ…」
理解出来ない状況に、何度も瞬きを繰り返す。
帝国の人間である私を、何故王様は……………。
正直、疑問でしかない。
冷酷で非情だと言われる王様が、ボロボロの姿で私を優しく抱きしめている。
私は、やはり非情なお方だとはとても思えない。
(……………帝国での噂は、ただの噂かもしれない)
『かもしれない』じゃなくて、きっとそうだ。
王様は冷静を取り戻すと、立ち上がる。
そして、次は上から私を見下ろした。
「……先ずは医者に診てもらえ。それから回復するまで部屋で休む様に」
それだけ口にすると濡れた髪をかき上げ、王様は早足で部屋から出て行った。
私はただそんな王様の後ろ姿を、後ろからジッと見つめていた。