冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「そうなの?」
思わず聞き返すと、クランベルは当時の状況を思い出すのか様にゆっくりと話し始めた。
「始めこそ冷静でしたテオビューク様は中々見つからない状況にしびれを切らし…大臣を一人ずつ切り捨てればいずれ犯人にたどり着くと言い出し、王様に関しては視察地から戻られてから休まずに自ら捜されておりました」
まさか視察へ向かわれた王様が来て下さるなんて思ってもいなかった。
しかも、あの様なボロボロのお姿で。
まだ何日か続くと予想されていた視察だったが、私のせいで急遽戻られ、その上休まれずに捜して下さっていただなんて……。
何だか申し訳ない気持ちで一杯になる。
しかし、それと同時に何故王様は私を捜しに来て下さったのか疑問に思った。
私はただの妃なのに。
帝国から嫁いだ言わば、人質なのに。
「王様は何で私を捜しに来たの……?」
疑問に思うが答えは出ない。
いつもなら自問自答で終わるはずが、今回は自答では終わらない。
(何で…?)
その続きを誰かに聞きたい。
しかし、クランベルはその質問には答えてくれなかった。
答えて欲しいのに。
「何でだと思う?」
もう一度聞く私を見て、クランベルは一瞬悩むような素振りを見せた後、閉ざしていた口を開かせた。
「………そのお返事は王様ご本人からお聞きになられてはいかがでしょうか?」
「え……っ…!」
「わたくしに王様が考えていらっしゃるお気持ちを述べる力はございません。ですが、ご本人様であれば、確実なお答えが聞けるでしょう」
確かにそうだが。
王様にこんな事聞いて良いのだろうか。
『何故、あの時捜しに来てくれたのですか』なんて。
失礼だろうか。