冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
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初めて向かう執務室への道なりは割と自室から遠く感じ、その上気温が何度か低くなっているかの様な寒さを感じた。
他の廊下と見た目変わらないが、何か違う。
流れる空気がどこか重く感じる。
「王国の月、王妃様」
私を見るや否や、頭を下げる騎士の方。
「王様は中にいらっしゃる?」
「いらっしゃいますが……誰も部屋には近づけるな……とご命令になられまして……」
つまり、中へ入れないと言う事か。
困った…と、後ろに控えるクランベルを見つめると全く気にしていない様子で、むしろ予定通り進める気満々の様に見えた。
これは実行すべきか…と覚悟を決めながら再び声をかける。
「急用なの。悪いけど、失礼するわね」
「あ……お妃様……っ!」
焦る騎士の言葉はさておき、ドアをノックすると不機嫌な王様の声が中から聞こえて来た。
「………誰だ?誰も部屋には近づけさせぬ様言ったはずだが」
「王様、私です。ガーネルです。………今、お時間宜しいでしょうか?」
恐る恐る声をかけてみる。
すると中から王様の驚いた様な声が聞こえ、その後許可のお返事を頂く事が出来た。
「失礼致します……」
ここまで来ておいて、緊張しながらドアノブを回す。
椅子に腰を下ろす王様の机の前には何やら資料が積まれており、どこかお疲れの様にも見える。
「部屋にて休む様、指示していたはずだが」
「その……」
お疲れの王様に、この様な事お聞きしていいのか再び躊躇ったけれど。
せっかく心を決めて、ここまで足を運んだのだ。
何もしないで帰る訳にもいかない。