冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】



                 ♢


初めて向かう執務室への道なりは割と自室から遠く感じ、その上気温が何度か低くなっているかの様な寒さを感じた。


他の廊下と見た目変わらないが、何か違う。


流れる空気がどこか重く感じる。


「王国の月、王妃様」


私を見るや否や、頭を下げる騎士の方。


「王様は中にいらっしゃる?」


「いらっしゃいますが……誰も部屋には近づけるな……とご命令になられまして……」


つまり、中へ入れないと言う事か。


困った…と、後ろに控えるクランベルを見つめると全く気にしていない様子で、むしろ予定通り進める気満々の様に見えた。


これは実行すべきか…と覚悟を決めながら再び声をかける。


「急用なの。悪いけど、失礼するわね」


「あ……お妃様……っ!」


焦る騎士の言葉はさておき、ドアをノックすると不機嫌な王様の声が中から聞こえて来た。


「………誰だ?誰も部屋には近づけさせぬ様言ったはずだが」


「王様、私です。ガーネルです。………今、お時間宜しいでしょうか?」


恐る恐る声をかけてみる。


すると中から王様の驚いた様な声が聞こえ、その後許可のお返事を頂く事が出来た。


「失礼致します……」


ここまで来ておいて、緊張しながらドアノブを回す。


椅子に腰を下ろす王様の机の前には何やら資料が積まれており、どこかお疲れの様にも見える。


「部屋にて休む様、指示していたはずだが」


「その……」


お疲れの王様に、この様な事お聞きしていいのか再び躊躇ったけれど。


せっかく心を決めて、ここまで足を運んだのだ。


何もしないで帰る訳にもいかない。



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