冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「上手い事、話が収まりましたね。スレンスト帝国の皇女様がお妃様と言う事を公表された時、大臣等の批判は目に見えておりましたが、何とまた都合の良い良い言い訳を見つけられた様で、悩み事も片付き、安心致しました」
一歩後ろを歩く宰相のレニアスは、安心したように息を吐いた。
スレンスト帝国の皇女だといつ発表するか。
それがレニアスの、最近の悩みだったのだ。
悩みが解決したレニアスの顔は疲労が伺えるものの、それは穏やかだった。
「万が一、民からの批判に備えて対策は行いますが、それは極一部の者でしょうね」
「何故、そう思う?」
「あの童話は今では国民の知る有名な物語です。子供から大人までも知るその童話に基づき、敵国の皇女を『竜が認めし花嫁』と王様が公表し、受け入れた。たかが童話だと言われてしまえばそれまでですが……王様自ら公表されたそれを下手に批判する真似は取らないでしょう?下手に批判すれば、王族不敬罪となりかねないので」
その理由を聞いた王様は、口元を緩めた。
貴族は下手に口を開けば、不敬罪になりかねない。
民からの批判は、対処次第でどうにでもなる。
これで、当分の間は問題なさそうだ。