冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
レニアスはそう言って懐から招待状を取り出す。
「今年もまたフェルノ公国から夜会の招待状が届いております。普段はご参加されておりませんので断っておりますが……いかがでしょうか?」
レニアスは笑みを浮かべながら、その招待状をこちらに手渡す。
古くから同盟を結んでいるフェルノ公国の大公殿下の名が、そこには記載されている。
その人物的には害ある者ではない。
(だが、しかし……)
「行ったとして、関係がどうかなるものなのか?」
口から出た素朴な質問。
誰かとパーティーへいった事など無いに等しいが、行ったとして関係が変わるとは思えない。
「夜会でご一緒にダンスされたり、二人きりで会話なさるだけでも関係は変わってくると思います。それにパーティーと言いますと、やはり贈り物でしょうか…」
「……贈り物か。例えば、どんな物を贈るのだ?」
「私でしたらドレスを女性に贈ります。そのドレスを身に着け来られたら、こちらも嬉しくなりますので」
レニアスに聞いて正解だったようだ。
その提案と言い、贈り物と言い。とても興味深い。
満足そうな表情を見せた事で、レニアスは更にもう一言口にした。
「女性は贈り物を喜ばれますので、距離は縮まるかと思われます」
「……そうか。参考にさせて貰う」
参考にさせて貰うなどと言ったが、それは殆ど決定事項に近い。
夜会に誘い、ドレスを贈る。
そうすれば、少しはこちらに気持ちが向くのではないだろうか。
そして、その夜会であの者の事を知れるはずだ。
今から夜会の想像を膨らませ、思わず口元が緩む。
「……噂通り……王様は寵愛なさっているのですね」
「何か申したか?」
「いいえ……何でもございません」
否定するレニアスの顔は、何故か嬉しそうにほほ笑んで見えた。