冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
静寂の中で
あれ程騒がしかったその場が一斉に静まり返る。
いきなり現れた、美しい黄金の髪のその人物に皇帝陛下は顔を引きつらせた。
「…これはこれは、アデリカル王国の国王様ではありませんか!事前に何も聞いておりませんが…一体何用でしょう?」
愛想よく取り繕おうとする皇帝陛下に、他国の王様は鼻で笑った。
「面白い話を耳にしたものでな。連絡しては意味が無いと、こうして見に来たのだ」
「………その面白い話とは?」
「何やら皇族で処罰を受ける者がいるそうじゃないか」
「何故それを………っ」
帝国の人間でさえもまだ知らないであろう話を、先程この場に現れたばかりの他国の王様が知っている。
皇帝陛下でなくても、この場にいた人間であれば驚かずにはいられない。
「………ふっ。余を誰だと思っているのだ。隣国の動向ぐらい常に把握している」
「しかし……」
それにしても、普通に考えて可笑しい。
まるで、こうなる事を事前に予測していたかの様だ。