冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
クランベルの淹れてくれた紅茶に口をつけようとした時、何やらドアの向こうが騒がしく感じて、手を止めた。
「何かあったのかな?」
いつもはとても静かなのに、こんなにも騒がしいなんて。
何か問題が起きたのではないか…と心配になる。
「開けるぞ」
ノックもなしに中へ入って来たのは何と王様で、先程の騒がしさの意味はこれだったのかと察する。
支度も何もしていない状態でのご対面に、普段は表情に出ないクランベルだが、今回ばかりはかなり焦っている風に見えた。
外で待機させてある侍女も同じ事を思ったのだろう。
あの騒がしさの理由はそれも含まれているはずだ。
昼間に寝巻で王様とご対面する妃など、そうはいない。
『淑女であれば、赤面を起こすレベルなのかもしれない』と、冷静に心の中で呟く。
来てしまったものは仕方ない。
今更支度する訳にもいかないので、取り合えずベッドの中から出ようと動く…………が。
「そのままで良い」
「え……しかし、そうゆう訳には……」
王様を目の前にベッドの中にいる何て。
普通に考えて不敬なのに。
「余がそのままで良いと言っている」
「では……お言葉に甘えて失礼致します」
あまりに強い押しに、私はベッドの中へ戻る。
王様は適当に近くのソファーへ腰を下ろし、そこへクランベルがお茶を運ぶ。