冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
首を傾げる私に、王様は再び口を開く。
「パーティーに参加するのだから、新しいドレスが必要だな」
「いえ、その様に気を遣われなくても、今あるドレスで十分でございますが……」
「いや、せっかくだ。ドレスを新調しよう」
話を聞いてか聞かないでか。
少し強引な王様は、外に控えていた侍女を呼び寄せると、デザイナーへ連絡を取るようにと指示をした。
「あの……王様!私は本当に今あるドレスでも……っ」
持っているドレスの中には、まだ一度も使っていないドレスもある。
気を遣ってか、ここへ来るときに沢山のドレスを用意して下さったので、ドレスには正直困っていない。
王様を止めようと口を開く私の元に、クランベルは静かに近づくと耳打ちをした。
「……これは王様のご厚意でございます。素直にお受け取りされた方が宜しいかと…」
「王様の……ご厚意」
王様のお気持ちであれば、断る訳にはいかない。
こんな贅沢な贈り物を頂いて、良いのだろうか。
「あの……ありがとうございます」
何一つ返せていないのに、王様からは与えられてばかりいる私。
その現状に少しだけ落ち込んだが、それよりも王様のご厚意が何だか私はとても嬉しく感じた。