冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
そして、ここでもある計画が順調に進んでいた。
「……気にくわないと思っていたが、まさか汚らわしい帝国の皇女だったとはな」
顔を酷く歪ませた男――――――ベルデ―クは、拳を堅く握りしめる。
「尚更あの地位に相応しくない…っ!!あの地位に誰よりも相応しいのは、お前だ。ルティアン」
視線の先には優雅に紅茶を啜る娘、ルティアンの姿。
「王城へ伺っても、中々王様に会わせてくれませんのお父様。お妃様も駄目でしたわ」
憂い顔を見せるその姿は、どこか弱弱しくも艶やかで美しい。
「ガードは堅いが、問題ない」
「どういう事ですの?」
「今週、公国で開かれるパーティーに参加するそうだ。そこにお前も行きなさい」
「しかし……招待状が来ておりません」
「大丈夫だ、心配する事は無い。裏で入手したからな」
そう言って見せたのは、どこからか手に入れた本物の招待状。
それを見たルティアンは目を輝かせる。
「では…わたくしもそこへ行けるのですね!」
「あぁ。王様へ近づき、あの妃よりも優れている事を証明して来なさい。お前ならあのお方のお心を手に入れる事が出来るはずだ」
父であるベルデークの誘惑する様な甘い言葉に、ルティアンは闘志を燃やす。
「わたくし、必ずやあのお方のお心を手に入れ、その座を手に入れますわ」
「あぁ」
我々一族から、王の子を。
その野望にベルデークは、不気味にほほ笑んだ。