冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
夜会に潜む悪魔
♢
「お妃様、お似合いですわ……っ!」
新調したドレスを身にまとった私を見て、クランベルを始めとする他の侍女達がそれぞれ歓声を上げる。
夜空を想像させる濃青色のドレスには、星の様なデザインが散りばめられている。
足元にいくほど色は変わり、綺麗なグラデーションに仕上がっているところ、流石は一流デザイナーの手掛けたドレスだ。
普段のドレスと違うところと言うと、やはりこのドレスの型か。
身体のラインを強調したマーメイド型のドレスにする事で、心なしかスタイルが良く見える。
「お化粧すると……まるで別人ね。落とすのが怖いわ」
大きな鏡に映る私の顔は綺麗にお化粧が施されており、自分で見ても全くの別人に見える。
普段からもお化粧はしているが、それとは全く比べ物にならない。
今回はかなり張り切っている様だ。
—―――コンコンコン。
「失礼致します」
返事を返すと、開いたドアから顔を見せたのは執事長のルークスだった。
(久しぶりに見た気がする…)
「ご支度は済みましたでしょうか」
「えぇ。皆さんが頑張ってくれました」
そう言って着飾った姿を見せる。
ルークスは一応見てくれたが、直ぐに目を逸らされてしまった。