冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「ご支度がお済みのようでしたら、外に待機させておりますドラゴンの元へお向かい下さいませ」
「もう出発時間?」
「王様のご支度も済みましたので、予定よりも早く出発されるそうでございます」
淡々とした口調で質問に答えるルークス。
初めてお会いした時は、眉間にシワを寄せ嫌悪感をあからさまに私へ向けていたが、その姿からはあの時感じた嫌悪感が感じられない。
何かあるとしたらあの事件がきっかけの様に思えるが。
今は気にしない事にしよう。
「外までご案内致します」
ルークスの案内で外に出る。
ドラゴンマークが下に描かれた広場には、数人の騎士たちとドラゴンの姿があり、私はあるドラゴンの姿に思わず驚きの声を上げた。
「え……これって…っ!!」
黄色い鱗を持つそのドラゴンは、あの時閉じ込められた場所にいた赤い瞳を持つドラゴンだった。
「暴れていた厄介者が急に大人しくなったので、ドラゴン使い達が感謝の印にと贈って来たのだ」
暴れる様子もなく、大人しくその場で待機する姿は、ここにいる他のドラゴンと何も変わらない。
私を視界に捉えると、そのドラゴンは重たい巨体を持ち上げてこちらへ近寄って来た。