冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
軽く呼吸を整えると、気を引き締める。
「失礼ながら王様と私は今からテラスへ行きますので。宜しければ、ご一緒されますか?」
「な…何ですって…?」
返ってきたのは怒り気味に震えた令嬢の声。
そもそも二人きりでなくては、いけないのだろうか。
そう思った結果、今の様な言葉をかけたのだが、どうやら気に触ってしまったみたいだ。
「出来れば王様と二人きりで過ごしたかったのですが、ご令嬢がその様に仰るので……………もしや余計でしたか?」
「……なっ!!」
その言葉に彼女は顔を真っ赤にさせた。
そして、王様の発した次の言葉で、彼女の顔は更に赤くなった。
「そろそろ何処かへ行かれた方が良いのでは?ほら……」
「…………っ!!」
王様はわざとらしく、周りへ視線を向ける。
そこには周りを囲むようにして見物する、貴族達の姿があった。
『ねぇ…あれをご覧になって』
『まぁ…!何て図々しいお姿です事…』
『哀れね。相手にすらされていない』
『見た事ないですが、何処のお方でしょう?』
静かな笑い声と、周りから向けられる蔑むような目。
その空間に耐えきれなくなった令嬢は顔を真っ赤にさせたまま、その場から立ち去った。