冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「王妃として立派に努めておりますか?貴女は皇女の中でも一番出来が悪かったのでわたくしも含め、皆は心配していたのですよ」
皇帝の隣に引っ付き心配そうに眉を寄せるのは、私を嫌っていた皇妃様だ。
口調は優しいが、言っている事は正反対。
この人は心配など、少しもしてはいない。
邪魔な存在は消し、自分の利益になる者は側に置く。
皇帝の寵愛を得る為なら何だってするのが、この人だ。
見栄と利益に取り付かれた二人は、まさにお似合いのカップルと言える。
「何も心配する様な事はない。この者はとてもしっかり努めている。余の妃としては十分過ぎるぐらいにな」
「…………王様」
優しく髪に触れられただけなのに、心臓がうるさい。
もしかしたらこの場の雰囲気に、思わず緊張しているのかもしれない。
「ま、まぁ!国王陛下はこの子の事を少々甘やかしておいでなのではございませんか?」
皇妃様的には先程王様が見せた反応が面白くなかったみたいで、更に私の事を口に出す。
どうしても私を下に下げたくて必死のようにも見える。
この人は自分よりも目立つ人が嫌いだから。
常に自分が一番で無くては、気が済まない性分なのだ。
「いや、本当の事だ。どこかの妃よりも十分に礼儀や作法を理解していると思うが……」
「な…………っ…!!」
一言もそれが皇妃様とは口にしていない。
それなのに、皇妃様はその言葉を聞いて顔を真っ赤にさせた。