冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
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機嫌良く夜会に出掛けられたはずのお嬢様が、朝方に甲高いヒールの音を響かせながら機嫌悪く帰って来たもので、その場に偶然居合わせた使用人達は気まずそうな表情を浮かべた。
機嫌の悪いお嬢様には関わっていけない。
関わりでもしたら、落ち着くまで八つ当たりされるのが目に見えているから。
「ムカつく………っ!!!」
大きな声を張り上げる。
馬車の中では流石に寝れなかったのだろう。
目の下には大きなクマがある。
「おや、帰ってきたのかい?」
「お父様!!」
その前に現れたのは、今から王城へ向かう予定のベルデーク公爵。
「王の心は掴めたのかい?」
その何気ない言葉に、先程の怒りを思い出す。
「許せない…………っ!」
娘の余りの苛立ち様に、ベルデーク公爵は思わず顔を引きつらせる。
「どうしたんだい?」
「全て………あの女のせいよ!!」
「あの女……かい?」
「王様から全く取り合って貰えなかったのは、あの女がいるから。あの女さえ消えてくれれば今度こそ、王様の隣に立てる…!」
その言葉を聞いて夜会で起きた事を何となく察した公爵は、自分の野望実現の為に考える。
「……やはりあの妃は邪魔だな。消さなくては」
「お父様………わたくしがしても宜しいかしら」
「何か良い手があるのかい?」
「…そうね。必ずやこの手で殺めて見せるわ!」
そう言って狂気じみた笑みを浮かべる。
落ち着く間もなく。
第二回目の暗殺計画が、裏で始まろうとする____。