冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
お茶会当日―――。
セッティングした庭園の会場には、五名のご令嬢のお姿があった。
「この度はお茶会にお誘い頂きありがとうございます」
「王城の庭園はとても美しいとお聞きしましたが、本当に美しく心が穏やかになりますわ」
紅茶を啜りながら、花の咲き誇った美しい庭園を見渡す。
「王妃様とこうしてお話させて頂けるなんて、光栄ですわ…っ!」
「いえ…私の方こそ今回はお茶会にお越し頂きありがとうございます」
名前を聞いたところ、やはりその名にピンとは来なかったけれど、どの方も貴族と言う事には変わりなかった。
帝国から嫁いだと言う事もあって、お茶会に来て頂けないのではないかと少し心配していたが、どうやら杞憂のようで安心した。
「王妃様。紅茶はいかがですか?」
「あら、その紅茶は?」
始めに侍女から淹れて貰った紅茶とは違った色のそれに、思わず首を傾げる。
「先程、侍女が追加の紅茶を持って来ましたの。確か、他国で栽培される珍しい物と言っておりましたわ」
説明するとルティアン公爵令嬢は、空いたティーカップに紅茶を注ぐ。
近くに侍女もクランベルも控えているのに、注いでもらうなんて何だか申し訳ない。
「良い香りね…」
ティーカップの中から、甘い香りが漂ってくる。
「どうぞ、お飲み下さい」
「えぇ、では頂きます」
笑顔で進めてくれるルティアン公爵令嬢の姿に、注いでもらった紅茶を啜る。
「……っ!?」
甘い香りとは反対に、口に広がる苦味と辛み。
喉が焼ける様に痛い。
――――ガチャーン!!
取っ手を掴む手が緩み、持っていたティーカップが激しい音を立てる。
「……っ…!」
「お…お妃様……っ!!」
喉元を押さえ苦しみだす私を見て、クランベルが血相を変えて駆け寄ってくる。
「きゃー!!」
一緒にお茶をしていたご令嬢の一人が、大きな悲鳴を上げる。
「どうされましたか………っ…!」
その悲鳴を聞きつけて、やって来た騎士はその惨状に思わず顔が青ざめた。
直ぐに沢山の騎士達が集まり騒がしくなったが、それよりも私は息が出来ず、ただ苦しい。
どれだけ騎士達が集まって来ても、この苦しみが消える事はもちろんない。
「……ゴホ…ッ…ゴホゴホ…ッ!!」
「誰か至急医者を!!」
「早くして…っ!!」
侍女達の叫び声が聞こえる。