冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】



ジェットはそう言って私から剣を奪うと、後ろに下がらせる。


――ブシャッ…っ!


切った瞬間、盛大に血しぶきが上がる。


更に敵の血で塗れたその姿は狂気じみていたが、それよりもジェットのとても悲痛な瞳から目を逸らせない。


(ジェットも私も………なんて悲しい運命なんだろうね)


神から特別な力を授けられた王女の私と、剣術の才能に優れ戦場の英雄と呼ばれる彼。

私達は戦場を背く事は出来ない。これは定められた宿命だから。



「では、これを持って戻りましょう」


(日々生きた心地はしないけれど…それでも民を守れるから別に構わなかったんだけどね)


この手で敵の進軍を防ぐ事が出来るのなら。


この力で民を守る事が出来るのなら。


王女としての苦労する事のない幸せな生活が出来なくても、惜しくはないと思った。




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