冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】



「でも、警備がしっかりした門をどうやって……」


「事前に入手していたのです。怪しまれない様に王城内で仕える侍女の一人に頼んで、"お茶会用の紅茶"の葉を」


「…なるほどね。後は一緒に煎じて出すよう指示すれば、特に怪しまれない」


「左様で…ございます」


真剣な表情で毒の経緯(いきさつ)を語る私に、クランベルは少しだけ不思議そうな表情をした。


(……毒殺未遂なんて王女時代では何度か経験したからね。日常的に毒に慣らしていたから、別状はなかったんだけど)


流石にガーネルは毒に耐性をつけさせていなかったので、かなり効いてしまったみたいだ。


(……今度から毒に慣らす訓練をしよう)


「あ、令嬢はあの後どうなったの?」


「令嬢は無実を言い張りましたが、毒を入手した侍女が指示された事を吐き、翌日処刑されました。ベルデーク公爵は娘が起こした大罪により、爵位を回収。異例の出来事に皆驚いております」


「……降格ではなく、爵位を奪ったの!?」


「はい。今回は重い事件ですから。例え公爵自身関係がないとは言え、娘の起こした出来事に、大きな責任を課せられておりました」


爵位は貴族階級だ。


それを取られたら、平民と同じ。


つまり公爵は貴族の中でも位の高い上の地位から、貴族すらない下の位まで落ちたと言う事になる。


生まれつき貴族の人間には、死と同じ苦痛だろう。




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