冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
飛び立ったデュサは口から火を吐き出し、敵を減らして行く。
その姿を側で見つめながら、次は自分の番だと剣を地面に突き刺す。
後ろにそびえ立つ大きな城。王城。
もしかしたら、この城の中でいつものように生活する事も、親しかった仲間達と笑い語り合う事も、もう二度と出来ないかもしれない。
けれど、生まれ持ったこの力に意味があり、その使い所がこの時の為ならばと、覚悟を決める。
「皆、一度こちらへ引きなさい!!」
声を張り上げる。
仲間が素直に王城側へ引き戻るのに対して、敵は恐れて一斉に引いたのだと勝利を確信して笑う。
しかし、直ぐに彼らは顔を青ざめる事となる。
「……地の神よ。我に力を貸し給え。強き鉄壁で仲間を、そして王城を……守り給え!」
言葉を言い終わると同時に土が盛り上がり、敵と味方の間に大きな壁が出来た。
敵が動揺する光景が、目にしなくても分かる。
「天空の神よ。この荒れた地へ怒りの雷雨を降らし給え」
空を覆い隠していた雲から、大粒の雨が降る。
そして、不穏な音を鳴り響かせながら壁の向こう側へ鋭い稲妻が走る。
それはまるで神の怒りかの様に荒々しく、神々しい。
戦いに決着が着くと同時に、力を失った体は地面へ崩れ落ち、
悲しげな目をしたドラゴンは何処かへと飛び去った。