冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
求婚
「い、今何と………っ!?」
その場に動揺が広がる。
一人だけではなく、周りにいた大臣や皇帝陛下までもが自身の耳を疑う様に、何度も瞬きを繰り返す。
「何だ、聞いていなかったのか?もう一度しか言わぬ。この者を余の妻へと迎える」
はっきりと王様の口から告げられたその言葉に、皆が言葉を失う。
「な、何故……よりにもよってその娘を?」
皇帝陛下の声は動揺のあまり、微かに震えているのが分かる。
「よりにもよって…か。つまり、そなたは何が言いたい?」
「い、いえ………その娘は皇族から出した恥ずべき罪人でございます。スレンスト皇家の妻が欲しいのでしたら、自慢の娘がございます。礼儀に作法、美しさと全てにかけて非常に長けた娘で……………っ」
言い終わる直前で、皇帝陛下は急に口を止めた。
何故だか、その顔は恐怖に引き攣って見える。