冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
私は力の持たない一介の皇女。
忘れられた皇女なのに。
(……………………………でも)
大臣達に目を向ける。
彼らは先程と同じく、醜いものでも見るかの様な表情をしていた。
「い、今すぐ口を閉じろ………っ!」
皇帝陛下の焦り声が聞こえてくる。
あの凄まじい獣の咆哮を耳にした時、正直言って心の芯が震えた気がした。
聞いた事が無いのにどこか懐かしくて。気分も高揚し。感情が熱くなった。
勇気が湧いて『しっかりと意見を言わなくちゃ』と、そう私に思わせた。
(どの道、一緒なら………)
瞼を閉じて、深呼吸を繰り返す。
ゆっくりと目を開けると、不思議なぐらいに気持ちは落ち着いていた。
「私は何もしていない!」
強い口調で、皇帝陛下へ向かって口にする。
その反抗的な態度に皇帝陛下は顔を真っ赤にさせて、その場から怒鳴り散らす。