冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
前世の記憶を思い出したのは、事故でも何でもない。
カイルーク・ゼル・メセス・アデリカルとしてこの世に生まれた時からだった。
心は出来上がっているのに、体は未熟。
再び始まる姫様のいない日々。
それは、とても耐え難いものだった。
しかし、参加したパーティーで偶然にも姫様の生まれ変わりとされる少女と出会った。
色褪せていた世界が、急に色付いていく感覚。
覚えていなくてもいいから、彼女と話をしたい。
だが、隣には仲良さげな男の姿。
幸せそうな笑顔に、この身を引いたのに。
隠密から知らされた情報に、思わず抑え難い強烈な怒りを感じた。
婚約を破棄されプライドを傷つけられたからと、皇帝へ直訴だと。
しかも、あたかも向こうが悪い様に話を偽造。
馬鹿にも程がある。
しかも、有りもしない罪を仕立て上げられ、危機に晒されているなど。