冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
ドラゴンに乗って
皇宮内で一番広いとされる庭園の開けた場所に、その方は立っていた。
「お、お待たせ致しました」
「来たか」
切れ長の目が、こちらへ向けられる。
金髪に碧眼の王様は容姿が整っていて、まるで物語に登場する王子様みたいに輝いて見える。
どこか冷たい面持ちに、先程使用人から言われた言葉を思い出す。
『知ってました?アデリカル国王様は、冷徹で非情な方らしいですよ』
支度途中。
今まで話した事もない使用人達が面白そうに話しかけてきた。
『慈悲の心を持たないと国外では有名でして、捕虜達は皆無残な死を迎えるだとか…。気に触る事をすれば使用人であっても、容赦なく切り捨てるそうですよ』
『本当に竜の血が流れているのではないかって、皆噂してます』
話しかけてきた使用人達は、まるで生贄でも見るかの様な目をしていた。
アデリカル王国の妃として嫁いでも、どうせ王の気分次第で殺される。
玩具であり帝国からの人質である私は、華々しい生活を迎える前に無残な死を遂げる…と。
そう言いたいのだろう。
しかし、否定はしない。
妃と言えば聞こえがいいけれど、彼女等の言う通り私は人質。
殺されても帝国にとっては大して困らない。
捨てるつもりで差し出された、生贄同然だから。