冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
(婚約破棄をして………まさか他国の妃になるだなんてね)
生きた心地はしないけれど、何もない皇女の時に比べ、妃と言う立場はまだ良い方かもしれない。
「それでは、出発するか。アディ!!」
支度を済ませた私を確認すると、王様は空に向かって声を張り上げる。
すると、その声に応える様に、大気を震わせるあの咆哮が聞こえてきた。
「ギュルル…ッ!」
___ドスン……ッ!
地面が大きく揺れ、激しい風が吹く。
腰まで伸びているシルバーピンクの髪が、勢いでフワッと宙に舞う。
降り立ったのは、王様の瞳の色と良く似た青いドラゴン。
その近寄り難い鋭い目付きは、どこかこの王様と似ている気がした。
「乗れ」
「………………え?」
その言葉に、思わず目を丸める。
(今、乗れ…って。え?これに乗るの…っ!?)
見上げる程に大きなそれは、乗り物と呼ぶにはかなり大き過ぎる。
「ここへは忍んで来たので、早く帰らねばならんのだ。早くしろ」
「そう言われましても…………」
どこにどう足をかけたら良いのか。
さっぱり分からない。