冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
(って言うか…内緒で来たの!?)
今サラッとマズい事を言った様な気がするけれど、あえて知らないふりをしておく。
中々、ドラゴンへ乗らない私を見て、王様は呆れた様にため息をついた。
「…こうしたら乗れるか?」
「…ひゃぁっ!?」
体が宙に浮く。
痺れを切らした王様が私の体に触れ、恐れ多くも手で抱えられた様だ。
「ギュルル…………」
幸いドラゴンも大人しく、その上屈んでくれたお陰で無事に乗る事が出来た。
ゴツゴツした背中の上には柔らかい椅子と手綱が置いてあり、王様は私を前へ座らせると後ろから手綱を握る。
「行け」
「ギュルルルル…ッ!!!」
___バサッ…バサッ…!
大きな翼を広げ、空へと羽ばたく。
馬車にすら乗った事の無かった私が、最初に乗ったものがまさかドラゴンになるだなんて。
誰が予想しただろうか。
___バサッ…バサッ…!
安定期に入ると、穏やかな飛行が続く。
始めは浮遊感に慣れず景色を堪能する余裕まで無かったが、閉じていた目を見開くとそこには見渡す限りの青空が広がっていた。
下には少しだけ雲が掛かっているが、まるで違う世界に来たみたいで思わず心が踊る。
「凄いか?」
「……はい。この様な光景、今までに見た事がありません」
「だろうな。宙の上など普通であれば目にする事も出来ない光景だ」
先程まで怯えていたのに。
風を切る感覚が、とても気持ち良い。
「そろそろ着くぞ」
王様の声で、徐々に降下する。
直ぐ近くには立派なアデリカル王国の王城があり、王城内に描かれたドラゴンマークの広場へと無事に着陸を果たした。