冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】


「私には………………とても贅沢すぎるお部屋だと思っただけでございます…」

「贅沢だと?」

「上手く口には出来ませんが……。私はこの様な良い部屋を使って良い人間ではありませんから…」


母国であるスレンスト帝国は、階級によって部屋が分けられていた。


自身の位によって待遇が異なり、当たり前、姉達とはその待遇がかなり違った。


皇宮の客間だって。


先日、使用したのが初めてだった。


いつも庭園で待たせるあの人に申し訳なくて、思い切って使用したのだ。


結果はあのザマだが、もちろんここでも妃の階級は存在するものだと思っている。


他国から来た私がいきなりこの様な部屋を使用して、他の妃に目をつけられたくない。


例え人質でも、それなりに平和に暮らしたいから。


先程の言葉に対して、直ぐに返事がくる訳でもなく。


王様はボソリと小さく何かを呟いた。


「そなたは幸せであるべきなのに、どうして不幸から始まったのか…」

「何の話ですか?」

「いや…気にするな。ただの独り言だ」


その目はどこか悲しく見える。


しかし、それは一瞬で直ぐにいつもの目に戻った。



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