冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
相当嫌いなのか。
まだ否定的な言葉を口にするルークス。
「簡単な話、あの者を気に入っているからだ。…一目惚れだと以前話したのを忘れたか?」
「忘れてなどおりませぬが…………」
「ルークス。お前は父上の代からこの王家に仕えてくれている筆頭執事だ。その点は感謝している。………が、余に対して少々口が過ぎるぞ」
少しだけ殺気をこめると、ルークスは口を閉じた。
ベテラン執事、ルークス。
宰相よりも余の近くにいる人物。
(殺気は込めたが、幼い頃から知っているお前を本気で憎んだ事はこれまでにない…)
俺の事を案じている事は分かる。
しかし、これだけは諦めるわけにはいかない。
幸せを思って諦めた俺に与えられた、これとない好機。
例え、相手が不幸の最中だとしても。
向こうに置いておくよりはだいぶマシだと思う。
(……そう。つまり問題は最初に戻ると言う訳だ)
城の中は目が届く範囲内だから良いとして。
もし、そうでない場所でスレンスト帝国嫌いな奴らが手でもあげたら。
再び心に影が落ちでもしたら。