冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「お待たせ致しました」
「やぁ、ガーネル!久しぶりだね」
客間で私を待つケレイブ様は、優雅に使用人から出された紅茶を啜っていた。
「あれ、ガーネル。君の目……」
「こ、これは違うのです!悪い夢を見てしまって…」
目を赤くさせた私を見て、心配そうなケレイブ様。
何も無いのに泣いてしまったと更に心配させたくなくて、夢と言い張る。
「…そう?」
そんな私を見てそれ以上追求する事もなく、ケレイブ様は話題を変えた。
「しかし、庭園も良いけれど、たまには客間も良いものだね」
冗談ぽく笑う姿に、思わず苦笑で返す。
今まで気を使ってくれていた言う優しさを知って、何だか申し訳ない気持ちになった。
「…驚いたかい?」
「え、何がですか?」
「僕が君に結婚を申し込んだ事だよ」
その言葉に先日の出来事が頭の中を過る。
密かに気持ちを寄せていたケレイブ様から、使いを通して結婚の申し出を受けた。
私のどこが良かったのかと聞く以前に、ただ同じ思いだった事がとても嬉しかった。
「ケレイブ様の妻になる事を、心の中で密かに望んでおりましたので…」
「君は嬉しい事を言ってくれるね」
ケレイブ様はその言葉に照れたご様子で、隠す様に手を顔に当て、笑う。
その姿が何だか可笑しくて。
結婚したらケレイブ様のお側で、こんな幸せがずっと続くのだと、まるで当たり前の様に思っていた。
信頼していたから。この国の誰よりも。