冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「婚儀の日取りと手続きについて相談したくてな」
「……………め、珍しいですね!王様自らご相談なさるとは」
予想外の言葉に、思わず驚く。
官僚や騎士個人の婚儀にさえ顔をお見せになさらない王様が、その様な話を自ら振ってくるとは。
「一体、どなたの婚儀ですか?」
重要人物の婚儀には違いないだろうが、相手が気になるところだ。
王様と最近親密にされているお方の誰かだとは思うけれど。
今のところ、検討がつかない。
「余だ」
「あ、申し訳ございません。今、何と?」
「もう一度しか言わぬぞ。余だ」
「…………………」
(俺は疲れているのか?)
軽く息を吐きながら、目頭を押さえる。
先程、余計な事を考えていたせいか。
一瞬、耳を疑う様な言葉が聞こえてきた様な。
(これ以上、お聞きしたら機嫌を損ねるしな…。でも王様がその様な事を仰られるとは思えない)
何と返すべきか。