冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
洗濯物が良く乾きそうな程に、雲一つない青空が広がっている。
気分も良いので庭園へ向かおうと、客間の前を通り過ぎようとしていた時。
聞き慣れたあの声が部屋の中から聞こえてきた。
「えぇ。順調ですよ」
その声に、ドアの前で立ち止まる。
幸い周りには誰もおらず不審に思う人もいない。
もう一度警戒する様に辺りを見渡し、誰もいない事を確認すると更にドアへ近寄った。
「何せ七年間も頑張ったのですから」
(やっぱり、ケレイブ様の声だ…!)
思わず表情が明るくなる。
来る事など事前に聞いていないけれど、男爵家の嫡男である彼がティアンノ卿の代理でお城にいても不思議ではない。
(何の用事で来たのかしら?)
気になり話を外で盗み聞く。
いけない事だと分かっていたけれど、気になって仕方がなかった。