冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「この商人を潰せ。一家共々路頭に迷わせろ」
「……………はい?」
わけが分からずに聞き返す。
「ここで二度と商売が出来ぬ様に手を打つ事と、これまでの華やかな暮らしが出来ぬ様に、商人にとっては命と言える信頼を失わせろ」
「…い、一体何故その様な事を?」
落ち度もない人物にその様な仕打ち。
信頼を失ったら、スレンスト帝国であっても商売をする事は厳しいと言うのに。
「………何故だと?」
「……………っ」
その場に張り詰めた空気が流れる。
まるで、真正面からドラゴンに睨みつけられているかのような威圧感と恐怖に、身動きが取れない。
「…あの者らは、余を怒らせた」
低く重みのある声。
かなりご立腹のご様子だ。
(一体何をしたんだ………その商人は)
静かな空間の中、更に資料をめくる。
家族構成からこれまでの実績まで。
流石に、隠密を使って調べ上げたのではあるまい。
(いや、これまでの王様であれば……………やりかねないな)
王様を怒らせたのが、運のつきか。
思わずこの商人へ同情する。