冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】


(娘を王妃の座につけ、貴族派としての立場を絶対的なものにさせたいのだろうが…)


奴の娘は何があって王妃にさせる訳にはいかない。


奴らにこれ以上の権力を、持たせてはいけない。


しかし、一番怖い事は奴らが権力を持つ事ではない。


その矛先が全てあの者に行く事だ。


こちらが批判を浴びせられる事については、どうだって良い。


けれど、それがあの者へいったら。


何かあったら。


正直、出入りの規制をかけたいところだが、ベルデーク家は代々王城の入出許可を出している事もあって、規制が出来ない。


だから、思う。


もし、城を空けたその間に何か起きでもしたら。


らしくないが、そう思うと不安で仕方がない。


考え込む姿に、ルークスが恐る恐る口を開いた。


「まさかとは思いますが………あの者をお思いでしょうか?」


思わず身体が、ピクリと反応する。


それを見たルークスは、分かりやすい程に顔を顰めた。


(……………またか)


ルークスはあの者の話になると、直ぐにそうなる。


『困ったものだ』とため息をつく。



< 78 / 190 >

この作品をシェア

pagetop