冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
(娘を王妃の座につけ、貴族派としての立場を絶対的なものにさせたいのだろうが…)
奴の娘は何があって王妃にさせる訳にはいかない。
奴らにこれ以上の権力を、持たせてはいけない。
しかし、一番怖い事は奴らが権力を持つ事ではない。
その矛先が全てあの者に行く事だ。
こちらが批判を浴びせられる事については、どうだって良い。
けれど、それがあの者へいったら。
何かあったら。
正直、出入りの規制をかけたいところだが、ベルデーク家は代々王城の入出許可を出している事もあって、規制が出来ない。
だから、思う。
もし、城を空けたその間に何か起きでもしたら。
らしくないが、そう思うと不安で仕方がない。
考え込む姿に、ルークスが恐る恐る口を開いた。
「まさかとは思いますが………あの者をお思いでしょうか?」
思わず身体が、ピクリと反応する。
それを見たルークスは、分かりやすい程に顔を顰めた。
(……………またか)
ルークスはあの者の話になると、直ぐにそうなる。
『困ったものだ』とため息をつく。