冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】



表情一つ変えずに目の前で跪き、頭を下げるテオビューク卿。


"罰"と言う重い言葉に思わず戸惑う。


「罰だなんて……」


ただテオビューク卿は、公爵から私を守ってくれただけなのに。


むしろ、その行動に感謝している。


「テオビューク卿」

「は…ッ」


上から見下ろすその姿は、下されようとしている罰を大人しくジッと待っている様で。


元はと言えば、私が付いて来なくて良いと口にした事が問題だ。


そうしていなければ、テオビューク卿が後からこっそりとついて来る事も、守った事でこの様に罪を意識する事もなかったのに。


「…顔を上げて」

「…………失礼致します」


指示をすると、俯いたテオビューク卿はゆっくりと顔を上げる。


(……………あ)


ここからだと、目元の切り傷がよく見える。


縦に入った目元の切り傷。


(初めて対面した時から思っていたけれど………)


「テオビューク卿のその傷、カッコイイですね」


思わず口から出たその言葉。


咄嗟に口元を手で覆い隠す。


目の前には目を丸くしたテオビューク卿の姿が見える。


「あっ。えっと、いや、そのぉ〜……」


急な発言にその様な反応をした事は分かる。


思いっきり変な事を口に出してしまった。


本当は罰は与えないと言おうとしていたのに。


必死に後に続く言葉を考える。


淑女教育の先生から、何度も『妃は威厳が大切』と言われていたが。


戸惑っている時点で、威厳も何もない。


弁解しようとしても、焦ってうまく口に出来ず。


余計に焦る。


< 84 / 190 >

この作品をシェア

pagetop