冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
表情一つ変えずに目の前で跪き、頭を下げるテオビューク卿。
"罰"と言う重い言葉に思わず戸惑う。
「罰だなんて……」
ただテオビューク卿は、公爵から私を守ってくれただけなのに。
むしろ、その行動に感謝している。
「テオビューク卿」
「は…ッ」
上から見下ろすその姿は、下されようとしている罰を大人しくジッと待っている様で。
元はと言えば、私が付いて来なくて良いと口にした事が問題だ。
そうしていなければ、テオビューク卿が後からこっそりとついて来る事も、守った事でこの様に罪を意識する事もなかったのに。
「…顔を上げて」
「…………失礼致します」
指示をすると、俯いたテオビューク卿はゆっくりと顔を上げる。
(……………あ)
ここからだと、目元の切り傷がよく見える。
縦に入った目元の切り傷。
(初めて対面した時から思っていたけれど………)
「テオビューク卿のその傷、カッコイイですね」
思わず口から出たその言葉。
咄嗟に口元を手で覆い隠す。
目の前には目を丸くしたテオビューク卿の姿が見える。
「あっ。えっと、いや、そのぉ〜……」
急な発言にその様な反応をした事は分かる。
思いっきり変な事を口に出してしまった。
本当は罰は与えないと言おうとしていたのに。
必死に後に続く言葉を考える。
淑女教育の先生から、何度も『妃は威厳が大切』と言われていたが。
戸惑っている時点で、威厳も何もない。
弁解しようとしても、焦ってうまく口に出来ず。
余計に焦る。