冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
けれど、ケレイブ様は。
ケレイブ様だけは。
『君の髪は素敵だね』って。
『月の光に当たって輝くその髪は、宝石の様に美しい』と言ってくれた。
瞳も色も、そう。
『お菓子みたいで美味しそう』と、優しく笑ってくれた。
何気なく口にした言葉だったかもしれないけれど、私はあの言葉がきっかけで気にしなくなった。
(最悪な人だったけれど………)
感謝はしている。
(……………………一応)
だからテオビューク卿も、その様に気を落とさなくても大丈夫だと思う。
誰かの一言で、気にしなくなる事もあるから。
それに、その傷は。
「勲章じゃないですか」
「………と、申されますと?」
「え、だって……。その目の傷は仕事中に出来た傷ですよね?」
「そう……ですが」
どこか戸惑う様な、テオビューク卿。
「誰かを守る為、もしくは目的を果たす為に出来た傷でしたら、どうしてその様な表情をなさるのですか?」
何となく聞いてみる。
「………皆、この傷を見て不快な気持ちになられるので」
(傷を見て不快に?)
顔は強面だけれど。
「頑張った証みたいで、私はカッコイイと思いますけど?」
そう、まるで勲章の様で。
勇ましくて素敵だと思う。
(私に言われても嬉しくないと思うけど……)
「だから、私の前では気にしないで大丈夫よ。怯えもしないし、嫌がったりもしない」