冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
ちなみに今回読み終わった本は、妾から生まれた嫌われ者の男爵家の娘が、身分を越えて侯爵様と結ばれる話で。
真実の愛を手に入れた二人が、今まで嫌ってきた者等へ復讐をするシーンがとても爽快だった。
現実では起りえない出来事が、本の中で繰り広げられる。
それが何だか、少し羨ましくて。
現実には無いことだから、尚更憧れる。
(以前読んだ小説の主人公の様に、私も本の感想を話し合える友人がいたら良いのに…)
そしたら、少しはこの生活にも楽しみが生まれるのに。
「…あれ。何、これ?」
ロマンス小説の書架でも、一番端の方に。
一際、古い本を見つけた。
赤茶色の本はそれなりの厚みをしており、タイトルには『竜の花嫁』の文字。
この国に住む人々が竜人と呼ばれる様に、それを題材とした童話本だろうと、ページをめくる。
竜の花嫁候補者達がただ一つだけ存在する妻の座を求めて争い、
一向に決まらない花嫁に痺れを切らした竜が候補者達を試練へと送り出す話で。
その試練を乗り越えた者だけが真の花嫁として向かい入れられ、竜の側で幸せに暮らすというもの。
最後まで目を通してはいないけれど、軽くページをめくったとき、竜を題材にした面白い作品だと思った。
借りてまで読みたいとは思えないけれど……。
手に持っていた本を元の場所へ戻すと、適当にその周辺からロマンス小説をいくつか選び。
図書室を後にした。