冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
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王城内のとある一室で、一つの机を囲む様に集まった複数の男の姿。
顔をしかめたある男は、その薄暗い部屋で静かに口を開いた。
「…王が進むべき道を間違えた時、正せるのは我ら家臣だけだ」
その言葉に周りは、同感する様に首を縦に振る。
「……その通りだ。どこぞの者かも分かり得ない女など、王家の品位を疑われかねない」
「我らの王は、あの女に騙されているに違いない…!即刻追い出し、その地位に相応しい人物を添えるのだ」
今にも行動に起こし出しそうな者等を見て、唯一冷静な男が口を開いた。
「……待て!王の不在中とは言え、勝手に追い出すのはどうかと思うが……。仮にも王妃だぞ?」
「た、確かにそれもそうだな………」
先程まで声を上げていた男等はその言葉で大人しくなる。
急に威勢が衰える中、不敵な笑みを浮かべる男が一人。
静かに口を開いた。
「………であれば、殺せば良い」
「…………………っ!?」
恐ろしいその言葉に皆が目を見開き驚くが、言葉を発した本人は動揺すら見せない。
普段と何も変わらない表情で淡々と話す姿は、まるで何も可笑しな事を言っていない様にも見えた。
「何も心配はいらない。これは当たり前の事だ。問題が起きる前に、その問題となる者を排除するだけなのだから」
「し、しかし…………もしバレれば不敬罪だけでなく、反逆罪で死刑だ…っ!」
その言葉に聞いていた他の皆は急に恐ろしくなり、顔を青ざめさせる。
唯一、表情を変えないのは先程の男のみ。
それどころか、鼻で笑う余裕さえある。
「それはバレたらの話だろう?バレなければ問題ない」
「……………っ!?」
「簡単な話、事故に見せかけて殺すのだよ。王の不在中は城内の警備が緩まる。そこを狙うのだ。これは……………そう。王の不在中に起こった不慮の死だ」
そう言って不気味に笑う男性は、もはや狂気。