冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「ここだ」
そう言って書き上げた紙を、目の前で掲げる。
それには地図らしきものが、書かれていた。
「ここに、その竜舎はある」
皆はその紙を興味深そうに見つめる。
「……そんな所に竜舎が。確かにそこは立入禁止区域として王城では規制されているがまさか……」
「…なるほど。狂暴なドラゴンがそこにいたから、規制されていたのか」
各自、思い当たる節があった様子で。
その地図を見て何やら頷く。
「…妃をそこで閉じ込める。そこには狂暴なドラゴンがいると言う事は………頭の回る貴殿等であればご察し貰えるだろうか」
その言葉に、聞いていた皆は唾を飲む。
「あの女は恐らく竜人ではない。そんな、普通の人間にドラゴンは容赦しないはずだ。後は妃の不注意による事故として処理すれば問題ない」
「話は分かった。だが、それは誰がするのだ?」
その言葉に皆は顔を見合わせる。
出来れば直接関わりたくないと言うのが、本音だろう。
こんな重大で下手すれば損な役。
誰も好き好んでしない。
結果に満足さえすれば良いだけの人間が、この場には多い。
「私は、ジレマン卿が良いと思うのだが…………どうかね?」
「……え…っ!?」
恐ろしい程に穏やかな表情をした男からのご指名に、ジレマン男爵は驚きのあまり目を見開く。