王子系幼なじみと、溺愛婚約しました。



「そばにいてくれなきゃ、やだよ……っ」

お願いってねだるように見てみたら、その言葉を待ってたと言わんばかりの顔をして、ニッと笑った。


「……そんな可愛いおねだりどこで覚えてきたの?」

「わかんない……よ」


「へぇ、じゃあ芙結は小悪魔さんだね」

「……?」


「天然で無自覚で可愛いとか……もう反則すぎ」


なんて言いながら、お願いを聞いてくれたのかギュッて抱きしめてくれた。


「……芙結のお願いとかぜったい断れない」

「優しい芭瑠くん……すき、だよ」


あんまり深い意味はなかったけど、"好き"の2文字を簡単に口にしてしまった。


キスもするし、こうやってギュッてしてくれるのに、わたしたちの関係にはっきりしたものが何もない。

まるで恋人同士みたいなのに、お互い気持ちを伝え合ってないから。


芭瑠くんは、わたしのことどう思ってる……のかな。


頭の中でそんなことを考えるけど、睡魔のほうが勝ってしまって、まぶたが重い。


ただ、わたしの気持ちは、ほぼ━━━━。



「……僕はこんなに好きなのに」


まどろみの中でそんな声が聞こえた……。

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