王子系幼なじみと、溺愛婚約しました。
王子様とまさかの再会。
ザザッと風が吹き、
桜の花びらがわたしの周りを囲うように、ピンク色で包み込まれる。
「この桜の木……、
ぜったい……芭瑠くんの家の、だ」
見間違えるわけがない。
いつも見ていたから覚えてる。
それに何度も覚えた既視感。
きっとそれは、わたしが昔ここに足を運んでいたから……。
ということは、わたしが今連れてこられたこの場所は芭瑠くんの家ってこと?
いくら昔ここに来ていたとはいえ、何年前のことなので、あまりはっきりとは覚えていなかったけれど。
周りをザッと見渡して、よく思い出してみれば、どんどん昔の記憶がよみがえってくる。
ここは、紛れもなく……
わたしの初恋の相手
━━━━━━芭瑠くんがいた場所だ。
ドクッと心臓が
さっきよりも強く音を立てたと同時。
「……芙結?」
柔らかな風とともに、
優しい声が、空気を揺らした。