王子系幼なじみと、溺愛婚約しました。
だって今まで一度も言われなかったから。
「どうして、ですか……」
ここで素直に"はい"と言えず質問で返してしまう。
「芭瑠さまのためです」
「わたしが行ったところで……何もできない、ですから」
これで諦めてもらえるかと思いきや、柏葉さんは予想外なことを口にした。
「木科小桃さまのことはご存知ですよね?」
「し、知ってます。この前お会いしました」
「……小桃さまは、毎日のように芭瑠さまに会いにいらっしゃっています」
小桃さんの名前を聞いて、あからさまに心臓が嫌な音をドクドク立てる。
柏葉さんはいったいわたしに何を求めてるの……?
わざわざ小桃さんのこと言うなんて……。
普段の柏葉さんならぜったい口にしなさそうなことなのに。
「小桃さまには悪いですが、芭瑠さまが本当に会いたいのは芙結さまかと思います。
ですから、少しでもお会いになっていただけないですか?」