王子系幼なじみと、溺愛婚約しました。
声を聞いただけでわかる。
一瞬、今わたしの周りだけの音が何も聞こえなくなるくらい……
ただ、心臓の音だけは異常なくらいバクバクと響いてくる。
ずっと、ずっと……
会いたくて仕方なかった人……。
自分を落ち着かせるために、ゆっくり胸元にあるネックレスをギュッと握る。
すると、背後に突然人の気配を感じて。
「芙結……?」
甘い香りが鼻をくすぐって。
ふわっと優しく、後ろから抱きしめられた。
まだ顔も見ていないのに、うるさい心臓の音は収まることを知らない。
「僕のこと……覚えてる?」
耳元で聞こえる、甘くて少し低い声。
声からしてわかる。
前と比べて格段に大人っぽさが増していることが。
ドキドキしながら、震える声を抑えながら。
「は、芭瑠……くん……っ?」